デュメンオレンジブランド

バックナンバー

役立つ病害虫の話

  • 役立つ病害虫の話
  • Disease And Insect Damage

ジャパンアグリバイオの研究員が、皆様に役立つ病虫害の情報を連載します。

役立つ病虫害の話

バックナンバーの情報につきましては、発表当時の内容をそのまま掲載しております。文中の農薬に関しましては必ず最新の登録状況をご確認ください。今まで使っていない農薬を使用する場合は、お近くの種苗専門店や農協、公共機関ともご相談ください。

  • クロケシツブチョッキリ(バラゾウムシ)によるバラ新鞘の萎凋症状
  • 2014.6.27

 

 

 4月下旬から6月にかけて、蕾が付いたバラ新鞘の先端がなぜか萎れてしまっていたという経験はないでしょうか?茎をよくみると針で刺したような傷があり、その近くにゾウムシのような昆虫を発見しました。

 

写真1:茎を傷つけられ萎凋したバラと加害昆虫

写真1:茎を傷つけられ萎凋したバラと加害昆虫

 

 このゾウムシを調べてみると、クロケシツブチョッキリ(またはバラゾウムシ)と呼ばれ、バラを萎れされた犯人でした。成虫の体長は2.7-3mmと小さく、よく観察しないと見逃してしまうかも知れません。
 なぜ茎に穴を開けているか、それは産卵のためです。但し、すべての傷に産卵しているわけではないようです。この茎の中でクロケシツブチョッキリの幼虫が育つのですが、加害された茎はやがてかさかさになって地面に脱落してしまいます。その時には茎の中にいた幼虫は3mm位に育っており、幼虫は土の中に入り蛹になって、成虫になる準備をするという生活環を持っているとの事です。

 

 

加害植物

 クロケシツブチョッキリはノイバラ・イチゴ・ラズベリー、サルスベリ、ハマナスも加害しますので、周囲の植物にも注意を払う必要があります。

 

 

バラでの発生時期について

 4月下旬頃から6月にかけて主な発生時期となります。年1回の発生といわれていますが、成虫が長期間見られることから2〜3回発生しているとも考えられています。

 

図:発生時期

 

 

被害

 成虫は産卵目的だけでなく、摂食でも茎やつぼみ、葉柄に傷をつけるので、要注意です。

 

 

対策

 成虫を放置しておくと次々と新しい茎や蕾を加害するので、新鞘の萎凋に気づいたら成虫を探して捕殺又は薬剤散布により防除しておく必要があります。

 バラ施設栽培では開口部からの進入を防ぐため、1mm目合いの防虫網を張っておくとよいでしょう。

 

 

(2014年6月27日)

[ TEXT:森本 正幸 ]

  • バラ継ぎ部に発生した肥大組織の診断
  • 2013.12.27

 

 

 下の写真、苗が納品されて5ヶ月目のものですが、こぶは継ぎ部分だけに見られ、根部には見られませんでした。しかしバラ根頭がん腫病ではないかと誰もが疑ってしまうと思います。植物病理学を学んだ私でも観察だけでは判断が難しいです。しかしこれまでの状況と遺伝子診断技術を使って診断した結果、このこぶはカルス組織という診断を下しました。

 

写真1:継ぎ部分の肥大組織と根部

写真1:継ぎ部分の肥大組織と根部

 

 

 この品種は台木に接木すると非常に高い頻度で、継ぎ部分にこぶを作るようで、2013年春にもこぶの部位に根頭がん腫病菌Rhizobium radiobacterAgrobacterium tumefaciens)が存在するか検査しましたが、病原菌の存在は確認されませんでした。今回も遺伝子診断技術を使って、複数個体を診断してみましたが、今回も病原菌は確認されず、こぶの発生株率が高いのに、病原菌がまったく確認できないということは病原菌によるものではない可能性が高いと判断したのです。

 しかし、もちろんこぶが継ぎ部分だけだから安心とはいえない例もあります。下の写真Bのコブからは根頭がん腫病菌が検出されなかったのですが、Aのこぶからは根頭がん腫病菌が検出されました。A、Bともに同じ品種ですが、コブの出来かたにちょっと違いがあるようにも見えます。

 

 

写真2:がん腫とカルス

写真2:がん腫とカルス

 

 

 もちろんこのような苗は苗生産会社から出荷されず廃棄されています。

 しかも発生率も0.1%以下と極低率で、2012年から岐阜大学福井教授の指導の下、各苗生産会社が協力し、バラ苗生産についての改善を進めてきた効果が出てきたと感じています。

 但し、油断は禁物です。根頭がん腫病菌はどこの土壌にも生存する可能性の高い、宿主範囲の広い病原菌です。刃物の消毒、圃場および作業場の衛生管理が最も重要です。今後も苗生産、切花生産双方が対策を継続していく必要があります。

(2013年12月27日)

[ TEXT:森本 正幸 ]

  • アーチング栽培の折り曲げ枝に発生したバラ根頭がん腫病について
  • 2012.11.23

 

 バラに根頭がん腫病を引き起すRhizobium radiobacter(旧名:Agrobacterium tumefaciens)は世界中のあらゆるところに棲む土壌病原菌として知られています。この細菌はほとんどの双子葉植物に感染し、日本では特にキク科、バラ科植物で多く病害に関する報告があります。また古くからナシ、りんご、ウメ、ブドウなどの果樹でも問題となっている病害です。

 これまでバラ根頭がん腫病はバラの根部や基部に多く発生することが知られていました。しかし、土を使わないアーチング栽培で折り曲げ枝にがん腫が発生する例が年々増えていると聞きます。これまでのバラ根頭がん腫病とは違うのではないかと不安になっている生産者もおられるのではないでしょうか。

写真1 アーチング栽培の折り曲げ枝に発生したがん腫

写真1 アーチング栽培の折り曲げ枝に発生したがん腫

 

 そこで、(敬称略)須崎浩一ら(2004)の論文ならびに岐阜大学福井博一教授の指導を受け、折り曲げ枝に発生したがん腫様組織の遺伝子診断を行いました。その結果から、折り曲げ枝にできたがん腫は病原性のバラ根頭がん腫病菌Rhizobium radiobacterAgrobacterium tumefaciens)によって引き起されたものと判断できました。

 

 

 

  • 写真2 PCRでの遺伝子診断
  • 写真2 PCRでの遺伝子診断
    プライマー:VCF3 VCR3
    分子量マーカー:
    がん腫1-3:枝に発生したがん腫
    Agrobacterium tumefaciens:対照区として
    tms2A tms2B primerを用いたPCRはデータ省略.

 

 

なぜ折り曲げ枝にバラ根頭がん腫病が発生したのか?

 バラは傷つくことによってアセトシリンゴンという物質を出します。根頭がん腫病菌は植物ホルモン活性を持つ遺伝子をバラの細胞に導入させることによって細胞を異常増殖させてがん腫を作らせるのですが、アセトシリンゴンはこの現象を誘導する物質なのです。
 アーチング栽培の場合、もっとも傷つくのは通路側に折り曲げられた枝です。人が通るたびに擦れ傷つけられます。つまり、バラにがん腫病菌が潜伏している場合、折り曲げ枝はがん腫の発生しやすい部位であると言え、傷ついた折り曲げ枝にがん腫が多数発生する理由が理解できます。

 

 

バラ植物体内にがん腫病菌が定着するのか?

 バラ植物体内にがん腫病菌が定着(潜在感染)する能力があると考えた方が良さそうです。
 島根県の報告によるとブドウではがん腫部位から6m以上離れた茎内でがん腫病菌が検出されたという報告があります。バラではそのような研究報告がありませんが、がん腫病を発症した株の花茎を穂木に苗を作成すると、がん腫病が増加する現象が確認されています。ゆえに、がん腫病を発病している株の採花に使ったハサミを消毒しないで健全株に使用すると感染を拡大させてしまうおそれがあります。

 

 

がん腫病発生株の治療法は

 結論から言いますと、完治は不可能だと考えるべきです。
 がん腫部位を切り取り、薬剤をつけると治療できるなどの情報を見かけますが、植物体内にはすでにがん腫病菌が広がっている可能性が高いのです。がん腫を取り除いたとしても、その株にはがん腫病菌が潜伏し感染源になる危険性があります。それほど感染力は強くないと思いますが、採花作業の頻度を考えるとハサミの消毒等の対策が必要です。

 根頭がん腫病の特徴・対策の詳細な情報は 日本ばら切花協会 ホームページ 「根頭がんしゅ病の特徴と対策(http://www.nichibara.com/2012/2012_gansyu_fukui.pdf 岐阜大学福井教授提供)」で得ることが出来ます。

 

日本ばら切花協会のホームページはこちら>>

 

 

苗生産におけるバラ根頭がん腫病対策について

 近年、日本のバラ栽培現場で根頭がん腫病が広がりつつあると聞きます。考えられる感染源は1.罹病している栽培品種 2.種苗 3.周辺環境 の3つだと思います。
 現在、岐阜大学福井教授の指導の下、各苗生産会社と協力し、バラ苗生産についての改善を進めています。


主な改善項目は  
1.接木の作業場および作業台・発根室の清掃および消毒強化
2.農業資材の消毒強化
3.作業に使うナイフの消毒強化
4.活け水の消毒徹底
5.穂木・台木品種の栽培管理改善および感染株の廃棄および改植

我々も最善を尽くします。

 

 

参考文献:

1.Kouichi Suzaki, Kouji Yoshida, Hiroyuki Sawada (2004). Detection of tumorigenic Agrobacterium strains from infected apple saplings by colony PCR with improved PCR primers. J Gen Plant Pathol 70:342–347
2.Bian See Tan, Junko Yabuki, Shogo Matsumoto, Koji Kageyama, Hirokazu Fukui (2003) PCR primers for identification of opine types of Agrobacterium tumefaciens in Japan. J Gen Plant Pathol 69:258–266
3.根頭がんしゅ病の特徴と対策(岐阜大学福井教授提供)日本ばら切花協会 HP http://www.nichibara.com/2012/2012_gansyu_fukui.pdf

(2012年11月23日)

[ TEXT:森本 正幸 ]

  • バラうどんこ病について
  • 2012.6.8

 

バラうどんこ病写真

 バラの切花は照り葉の美しさ、花弁が開きだすその瞬間の花形、上品な香り、これほど魅了される花はないですね。


しかし、その美しいバラを侵す病気の1つにバラうどんこ病があります。バラの栽培をされている方には今さらかも知れませんが、Sphaerotheca pannosa という糸状菌によって引き起こされる病気です。


 本病原菌は絶対寄生菌で、生きた植物体上でしか生育できないため、主な感染源は罹病植物となります。ノイバラやノバラにも感染し、越冬芽でも生き延びます。

 

バラうどんこ病写真

写真 バラうどんこ病

A:葉表面に発生したうどんこ病 B:葉表面のうどんこ病のアップ
C:実体顕微鏡(60倍)で観察、菌糸と分生子および分生子柄が見える D:分生子および分生子柄のアップ(光学顕微鏡400倍)

 


 近年、暖房コストを下げるため重油ボイラーに代わってヒートポンプを導入した温室で、うどんこ病が多発して困るという話を聞きます。 なぜヒートポンプを導入した温室で多発するような状況になったのでしょうか?それは、病原菌の事を知れば理解でき、さらに対処法のポイントも掴めると思います。

 

 

発病しやすい条件:

・気温は18-25度、露地では盛夏を除く春から秋で、特に秋は多発しやすい。施設栽培では、盛夏を除くと一年中発生する危険性がある。

海外の調査結果によると、夜間の高湿度(90%以上)と15℃前後の温度が、分生子の形成,発芽,感染の好適条件、昼間27℃前後で低湿度(70%以下)が分生子の成熟と飛散の好適条件と報告されている。


 

ヒートポンプを導入した温室で、なぜうどんこ病が発生しやすいか?

 一般的に重油ボイラーよりヒートポンプの方が風力は弱い。そのため、ピートポンプだけでは温室内の空気を十分に攪拌できず、空気の流れが滞りやすい場所ができる。その場所は十分な加温ができず、周囲より温度が低くなるため結露が発生する。結露しやすい場所が、アーチング栽培の折り曲げ枝のところと重なり、うどんこ病が発生しやすくなると考えられる。


 

診断のポイント:

 初期の感染は葉・茎の若い部分に起こりやすい。伸長している枝の若い葉の表面が水泡状に盛り上がる、または波打っていないか確認する。そのような部位に白いかびが見られればうどんこ病と診断できる。


 

対策:

・うどんこ病のために落葉した葉は、集めて焼却処分するなど、圃場衛生に努める。

・加温する時期は、循環扇も利用し、温室内の温度をできる限り均一にし、結露を防止する。

・例年の発生時期の直前から、予防剤の散布に努める。

・早期発見に努め、初発を認めたら直ちに治療効果のある農薬を7日おきに散布する。その際、作用性の異なる薬剤を使用すること。多発時は5日おきと散布間隔を狭め対応する。


 


 近年、環境負荷の軽減を目的として、できるだけ農薬を使用しないで、病気を防除する技術の研究が盛んに行われています。その1つが、植物に紫外光 UV-B(280nm-315nm)を当て、病害抵抗性を誘導させて、病気になりにくくするという研究です。昨年秋、この方法で、バラうどんこ病に対して抑制効果があったという研究成果発表がありました。まだ実験レベルだったと思いますが、実用化を期待したいと思います。

(2012年6月8日)

[ TEXT:森本 正幸 ]

  • バラ根頭がん腫病について
  • 2010.2.26

今回はAgrobacterium tumefaciensという細菌によって引き起こされるバラ根頭がん腫病について紹介いたします。近年、植物分類学の進歩で、本病原細菌はRhizobium属に含まれることが明らかになり、正式な学名はRhizobium radiobacterとなっています。しかしAgrobacterium tumefaciens という呼称の方がよく知られており、まだこの呼称が広く使われています。
このバラ根頭がん腫を引き起こす病原菌は植物ホルモン活性をもつ遺伝子を植物に導入する能力があります。いったんこの遺伝子を導入された植物は、その後病原菌の有無に関わらず、がん腫を作ってしまうのです。

症状と診断方法:
がん腫症状は接ぎ木部や根部に見られることが多いです。傷口から感染しやすく、はじめ小さな白いこぶが現われます。このこぶは植物の生育に伴ってしだいに大きくなり、時には4、5cm以上の大きな不整球形のがん腫になることもあります。がん腫は肥大とともにしだいにその表面が硬化して褐変し、さらに黒褐色に変わっていきます。
がん腫の大きさは根頭部に感染した場合、特に大きくなりやすく、地中の根では小さい傾向が見られるようです。また、地上部の枝の傷や折り曲げた部分にがん腫ができることもあります。根頭がん腫病によって株が枯死することは少ないのですが、根頭部に大きながん腫ができた場合、次第に生育、花つきも悪くなるため、切花栽培に大きな影響を与えます。
がん腫病の見分け方は、
1)発生初期は、白色や淡褐色のこぶ状隆起が認められる。
2)肥大したこぶの場合、黒褐色で表面がごつごつしている。
という点です。但し、発生初期は、正常なカルスと区別することは容易ではありません。正常なカルスの場合は表面が極端にごつごつにならず、色も通常の株元と大差ないようです。

 

がん腫症状の写真

 

伝染源と対策:
特に若いがん腫に病原細菌が多く生息し、やがて土壌中にも広がります。病原菌は土壌中で数年間も生存することができ、根や接ぎ木部の傷口から新たに侵入・感染します。
25℃前後の高温多湿の条件が最も発病しやすい環境で、この条件では感染後1〜2週間でがん腫の形成が認められます。しかし秋の低温期に感染した場合には、潜在感染し、がん腫が形成されるのは温度が上昇する翌年春以降になることがあります。
防除対策としては
1)接ぎ木や挿し木などに使用する刃物は必ず消毒する。
2)剪定や断根などの作業に使用する農具も消毒したものを使用する。
消毒方法は煮沸、火炎滅菌、次亜塩素酸ナトリウム1%溶液に2〜3分間浸漬などが有効です。
3)がん腫病が発生した圃場を改植する場合、土壌消毒が必要。
蒸気消毒、バスアミド微粒剤あるいはガスタード微粒剤を使用すると良いでしょう。
4)バクテローズ(商品名)という微生物農薬を植え付け時に苗の根部へ浸漬処理し、そのまま植え付ける。
但し、本農薬の効果は感染防止であり、治療効果はありません。

バラ根頭がん腫病は治療ができないので、予防が最も大切です。

(2010年2月26日)

[ TEXT:森本 正幸 ]

  • バラの虫害(コガネムシ類)
  • 2008.9.1

 

コガネムシ類写真1 コガネムシ類写真2

バラの営利生産でコガネムシ類が問題になることは殆ど無いでしょうが(クーラー付の締め切った温室ならなおさらです)、鑑賞目的の家庭園芸・露地栽培ではせっかくの花が無残に食害されるため、愛好家にとって重要害虫といえるでしょう。
写真は8月にバラの花を食害していたマメコガネです。成虫は5〜10月頃に現れ、体長8〜13mm、緑色の胸部と褐色の前翅、さらに腹部に白い毛が密集した部分があり、斑点のように見えるのが大きな特徴です。幼虫も芝など各種植物の根を食害する害虫として知られています。成虫は昼に行動し、名前の通りダイズなどマメ科植物を好んで食べるそうですが、ブドウその他多くの植物も食害するそうです。バラの花弁・蕾・雄ずいも好んで食害します。花が無い時は葉も食べるようです。集団で花に食らい付いていますが、人が近づくと後脚をピンと上げて警戒し、飛び立って逃げます。20世紀初頭までに日本から北米に侵入し、現地でジャパニーズ・ビートルと忌み嫌われる存在になったとのこと、この食べっぷりを見ると納得できます。その他バラを食害するコガネムシ類としてはヒメコガネ、ドウガネブイブイ等が知られています。

防除についてですが、他からも飛来するため農薬散布での防除は現実的でないかもしれません。ブドウ農園や芝が幼虫に食害を受けるゴルフ場では、成虫をフェロモントラップを用いて防除するようです。「コガネムシ」「トラップ」でネット上を検索すると各種コガネムシ類に個別に対応したトラップが販売されているのがわかります。また、ペットボトルとちょっとした食材でトラップを自作する人も多いようです。

(2008年9月1日)

[ TEXT:縄田 治 ]

  • バラの病害:バラ根腐病・立枯病・疫病
  • 2008.5.7

 

バラ根腐病写真

葉が黄化・枯死した状態写真

2006年8月に、葉が黄化・枯死をしたバラが持ち込まれました。ロックウールを用いた養液栽培で、夏になり気温が高くなった頃から急速に多数の株に症状が出たとのことでした。症状株では左の写真のように根の多くが黒褐色に変色・腐敗しており、根の腐敗が地上部の症状につながっていることは明らかでした。複数株の黒褐色に腐敗した根からはそれぞれピシウム属菌が高率で分離されたため、種の判別をDNAレベルで行ったところ(ピシウム属菌は見た目で細かな種類の判別は難しいです)、Pythium helicoides(ピシウム ヘリコイデス)と良く一致し、その症状が1996年に新たに発生した同菌によるバラ根腐病であると判断しました。

バラ根腐病については初発生以降全国に急速に広まっているとされています。高温の夏期に症状が急速に進みますが、伝染はその前後の時期によく形成される水中を泳ぐ胞子(=遊走子)により起こることなど、岐阜大学でよく研究されています。

2007年8月にも同様に左の写真のように葉が黄化・枯死したり、根が黒褐色に腐敗したバラの調査依頼があり、また同じバラ根腐病だろうと思い調査を開始しましたが、ピシウム属菌は検出されない一方、リゾクトニア属菌が腐敗部位から多数分離されたため、こちらはバラ立枯病と判断しました。これら根腐病と立枯病の他に類似の症状を出す病害としてバラ疫病が知られています。これら病害の間では発生時期や症状が似通っている反面、効果が期待できる薬剤の種類は大きく異なること、被害程度にも違いがありえるため、類似の症状が発生した場合はどの病害なのか正確に調査することが必要になります。

(2008年5月7日)

[ TEXT:縄田 治 ]

  • ご注意
  • このページのコンテンツは花き業界の方々向けに発信しております。そのために 一般のお客様にご覧頂いた場合、用語などわかり難い点が含まれる可能性があります。ご覧になる場合は、一般のお客様に対する情報提供を目的としたページではなく、内容に関するお問い合わせ等にお答えできないこともあることをご了解ください。

▲このページの上部に戻る

Copyright 2016 Japan Agribio Company,Limited,All Rights Reserved.