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育種のトビラ
第1回:プロローグ

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このコーナーの最初の記事は、2008年3月26日発売の人気雑誌『PLANTED』(以下プランテッド)でスタートしたばかりの新企画について取り上げることにしました。これは、プランテッドとのコラボ企画で、読者のアイディアをもとにオリジナル品種を作ろうというプロジェクト。それだけではありません。育種のアイディア段階からすべてをドキュメンタリー風に紹介してしまおうという前代未聞のプロジェクトなのです。昔の人気TV番組『料理の鉄人』の育種版みたいなものと言えばイメージしやすいでしょうか。変化していく植物の不思議さやその姿はもちろんですけど、山あり谷ありの途中経過も一緒に楽しんで頂けたら、とてもうれしいです。(2008年4月)

◆園芸ファンに「育種という言葉を広めたい!」その気持ちが通じた瞬間
この日、私は同僚の小川典子の紹介で(プランテッドの編集を行っている)ニーハイメディア・ジャパンを初めて訪問した。目的はただひとつ。一般の方に育種(品種改良)について情報発信する場を得るため。そのためにも、まずは編集部に育種について興味を持ってもらわなければならなかった。一段落してしまったガーデニングブームに再び火をつけるには、品種を作る過程にもっと関心を持ってもらうのが近道だと私は考えていたから。

なぜか日本では、園芸の一番面白い部分のひとつである育種について取り上げられる機会が少なく、園芸ファンでも『育種』という言葉を良く知らない場合が多い。どんな商品でもそうだが、モノづくりの現場について消費者が想像を膨らませたり、あれこれ語れることが、その商品をより魅力的にしてくれるものだ。そういう意味では、私達育種会社がこの部分をあまり表に出してこなかったことにも問題があったかもしれない。

さてさて、都市生活者が主なターゲットとなっているプランテッドだけに、育種ネタに興味を示してもらえるかどうかは正直自信がなかった。ところがだ。クリエーティブディレクターのルーカス・ビービーさんが大乗り気で、逆に彼からこんな提案が出されてしまったのだ。


「プランテッドの品種って作れないかな?」

「できますよ。簡単に。」

「えっ! ほんと? 前に別の会社に話を持ちかけたことがあるんだけど、それっきりで。」

「はい。時間さえ頂ければいくらでも。」

「で、どのぐらいかかるの?」

打ち合わせの様子写真
「5年あればなんとでもなるでしょう。」

「5年かぁ。もうちょっと短くならない?」

「運さえ味方にできれば2年でも。弊社のインプレシアは2年間で作りましたから。」

「2年でできるんならいいかなあ。」

「実際に販売まで考えるなら、生産のために1年余分にみていただけないと。」

「3年じゃあ・・・。でも、イベントとかで実物を見せるだけなら2年でできるってことでしょ。」

「ええ。運さえ良ければですけど。」

「2年ぐらいでできるんなら面白いね。」

「先の展開が予想つかないだけに、案外読者の興味を引くかもしれませんよ。」

「ボクはこれまで雑誌と連動して商品も作ってきたから、プランテッドでも何か作りたいと思ってたんだ。」

「他の園芸雑誌にできないことをやるのがプランテッドらしいじゃないですか。やってみましょう!」

ルーカスさんの提案から先は、ついつい勢いで言葉を続けてしまった。ひょっとしたらまんまと彼に乗せ られてしまったのかもしれない。かくしてこの日を境に、本企画を実現させるための検討が開始されたのだった。

◆プランテッド編集部員が研究所に来所
ルーカスさん始めプランテッド編集部の人達が来所。実際の育種の現場を見てもらうため、そしてこの企画を実際に誌面に取り上げるかどうかの判断材料にしてもらうためでもあった。育種用の温室と畑を案内しながら、商業育種についてわかり易く説明。とにかく良い品種を作るには数多く栽培しなければならないことは十分理解してもらえたようだった。そうしたらルーカスさんから早速こんな質問が。

「もしプロジェクトが始まったら、この温室の一部分をプランテッド用に使ってもらえるようになるってこと?」

「そういうことになりますね。大規模にってわけにはいきませんけど。」

「それで花が咲いたらボクらも選びに来ていいの?」

「もちろんです。みんなでワイワイ言いながら選びましょう。」

「何だかとっても面白そうじゃない。写真も撮れるよね。」

「ええ。でも周りの植物は秘密ですから、写真には写らないようにお願いしますね。」

「それはダイジョウブ。」

※一般の方の見学はお断りしています。ごめんなさい!
植物開発研究所写真1
植物開発研究所写真2

◆関心空間で集められたたくさんのアイディア。うまく行きそうな予感!
この日は2007年末に行われたトークショーや関心空間で集められた読者のアイディアをもとに、1件ずつその実現性について議論した。詳しいアイディアは関心空間でご覧ください。中には『握手花』なんていう斬新な提案もあって一同大笑い。やはり香りや色についての要望が多く寄せられた。せっかくなのでルーカスさんの希望を聞いてみたところ、「身近にあって自然を感じられるような品種がいいな。」とのこと。これはまさに『ここち開花』のコンセプトそのもの。こういう偶然の一致はとても嬉しいもの。担当者としては、何だかプロジェクトがうまく行きそうな予感がした瞬間だ。読者のアイディアとルーカスさんの希望が出揃ったところで、今度は私が具体的に植物種の選定と育種目標を決める番。これについては次回紹介させていただこう。 打ち合わせの様子写真

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