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育種のトビラ
第7回:夏の間にどうなった?

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今回の 育種のトビラ は、これまでにご報告してきた3つのターゲットそれぞれについて、暑い夏の間にどのような変化があったかをご紹介することにしましょう。(2008年9月)

◆『どげんかscentいかん』 はどうなった?

香りにこだわった『どげんかscent(セント)いかん』は、胚培養でエリシマムの種間雑種を作るプロジェクト。試験管の中ではスクスクと成長しているように見える貴重な雑種の苗だが、実際に土に植えても元気に育ってくれるのかはまだ誰にも分からない。遺伝的に遠い関係で雑種を作ると、自然界では生存できない植物が得られることが結構ある。もし、そうなってしまうと、あっさりこのプロジェクトは終了ということになってしまう。

だからまずは、馴化(じゅんか)をどげんかせんといかん!


馴化とは、完全無菌の培養条件から土に植替えて、外の自然条件に徐々に慣らしていくことを言う。エリシマムはもともと高温が苦手な植物だから、真夏の馴化は禁物なのだ。

『暑さ寒さも彼岸まで』という言葉があるが、植物を扱っているとこの言葉の的確さが良く分かる。
ここ栃木も夏は猛烈に暑い。でもお盆を過ぎると朝晩はめっきり涼しくなる。そうなればしめたもの。暑さに弱い植物達も夜の間に元気を取り戻すことができるようになるのだ。


せっかく生まれてきてくれた種間雑種。1日でも早く馴化して、1日でも早く花を見たいもの。でも、暑さで枯らしてしまったら元も子もない。慎重を期して、お盆から3週間経った9月8日に馴化することにしたのだった。

9月8日時点のエリシマム種間雑種の培養苗写真

9月8日時点のエリシマム種間雑種の培養苗

◆『これでいいんどあ♪』 の方は?

室内で鑑賞できるインドアプランツを作るプロジェクト『これでいいんどあ♪』。 こちらのターゲットは、ベルタイプのカランコエ。5月15日にタネを播いた割には、苗が小さ過ぎる。でも、まったく問題なし。これでいいんどあ♪


カランコエは昼間の時間が短くならないと花が咲かない短日植物。自然日長で花が咲き始めるのは、早くても年の瀬も押し迫った頃なのだ。だからちょうど良い大きさで花を咲かせるためには、真夏にタネを播かなければならない。でも、そうすると高温過ぎて発芽率が低くなってしまう。かといって5月に播くと株が大きくなり過ぎて置き場所に困ることになってしまうのだ。これを防ぐために小さなセルトレイに植わっている段階で、じつはそれ以上育たないようにずっと放っておいたのだ。残酷なようだが、これでいいんどあ♪


カランコエは多肉植物。過酷な条件で耐えられる凄い特殊能力を持っている。だからこんな仕打ちもへっちゃらなのだ。きっと全く気にもとめていなかったろう。


ポット上げしたのは8月に入ってから。最近ようやく大きくなってきたところだ。

 

9月17日時点のカランコエの苗写真

9月17日時点のカランコエの苗

◆最後に 『ルックッキング』 の現状は?

見て良し、食べて良しの植物を作る『ルックッキング』の正体はまだ秘密。でも育種はちゃんと進めている。こちらは選抜育種という方法で改良しようとしているので、どうしてもすぐには変化が訪れないのだ。


選抜育種とは、育種目標に近づく変化をしていきそうな個体を選び、何世代もかけて少しずつ求める姿に近づけていく方法。AとBを交配して良いとこ取りの品種を作るといった交雑育種と違って、先が見通せない育種だ。タネを採っちゃ播きを繰り返し、対象植物が、私の期待する潜在能力を持っていてくれることを信じて待つのみ。


今は子供の世代を育苗しているところ。少しは変わってくれたような気もするのだが、パッと見の変化はまだ無い。なので、誰が見ても変わったと思える段階まで、植物名は内緒にしておきたいのだ。でも、何となく次の孫の世代で一気に変化してくれそうな予感がする。じつは『ルックッキング』は、これまで私はタネすら播いたことが無い植物だし、全く根拠は無いのだか、なぜかうまくいくような気がしてならない。育種家の直感っていう奴だ。私の直感の的中率は育種に関してだけは、かなり高いし、まあ大丈夫だろう。


でも、もしそうならなかったら、私は見た目悪しの裸のキングになっちゃうな。

ルックッキングの葉写真

ヒント!ルックッキングの葉

フィデスの専門家とキクの産地を訪問写真

フィデスの専門家とキクの産地を訪問
(9月初旬)

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