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育種のトビラ
第18回:ルックッキングの正体

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今回の 育種のトビラ では、見て良し食べて良しを狙った育種の結果についてご報告いたします。(2009年7月)

◆ルックッキングの正体

ついにルックッキングの正体を明かす時がきた。

 

それはずばり、オクラだったのだ。オクラなら、食べて良しの理由は説明不要だろう。そして見て良しの方の理由は、花がなかなか綺麗だから。

 

簡単に育てられて花も綺麗。もちろん食べる楽しみはあるし、栄養満点。オクラはまさにスーパー園芸植物。スーパーで買って食べるだけじゃもったいない。

 

さて、肝心の育種目標についてだが、普通の品種よりも背が低くて分枝数が多い品種を狙っていた。こういう形質は生産者が畑で栽培するには不利に働くが、ベランダや庭先で個人が育てる分にはメリットがある。なぜなら背が高くなり過ぎる品種だと、どうしてもすぐに見苦しくなってしまうから。

 

ここで、これまでどのように育種を進めてきたのかを具体的に振り返ってみることにしよう。

1. まず最初は日本で手に入る品種を集めて実際に育て、その中で最も背が低い品種をいくつか選んだ。
2. さらにそれらの品種の中でも最も背の低い個体(株)を選んで、それから採種。
3. そして採ったタネを育ててまた同じことを繰り返す。

 

実際にこの2と3の工程を3世代繰り返したのだ。

 

この過程では、あっさりとうまく行きそうな気になった時もあった。しかし、残念ながら3世代の選抜育種にも関わらず、期待するような変化は表れなかったというのが結論。くやしいが、これ以上の深追いは禁物だと判断し、この選抜育種は中止することにした。

オクラの花の写真

オクラの花

 

ルーカスさんへの説明の写真

ルーカスさんへの説明、2008年10月

◆育種家は転んでもただでは起きない

ルックッキングのコンセプト自体には自信があるし、ここで諦めたら育種家の名前が廃る。それにオクラだからといって、簡単にお蔵入りはさせたくない。なんとか突破口を見つけねば・・・。

 

期待通りの結果が出ない時にどうするか。


どんなことでも同じだと思うが、じつはこういう気持ちになった時が本当のスタート地点なのだ。言い換えれば、それまではスタート地点にも立っていなかったってこと。今ようやく二流と一流の境目に辿り着いたと考えれば、もうひと頑張りしたくなるものだ。もちろんただ同じことを繰り返すんじゃなくって、発想の転換が必要だってことは言うまでもない。

◆突破口!?

オクラの学名はAbelmoschus esculentes。同じAbelmoschus属にはトロロアオイがあって、こちらの学名はAbelmoschus manihot。トロロアオイの根は、和紙の原料に使われることで有名だ。

 

じつは、選抜育種で狙った品種が作れそうもない状況になった時に備えて、オクラとトロロアオイの交配ができるようにトロロアオイも準備していたのだ。これはもう育種家の本能みたいなもの。で、実際に選抜育種に行き詰まりを感じたこの冬に、種間交雑を試してみたというわけ。

 

そうしたらできてしまったのだ。雑種が。
それも、紅オクラとトロロアオイを交配して、たった1粒だけしか採れなかった種子から。1粒のタネということは、もし芽が出なければお終いだったし、さらに無事に育ってくれただけに、正直かなり嬉しかった。

 

写真の通り、雑種の草姿は両親の中間というより紅オクラに近い。でも、雑種の方がオクラよりもずっと花が大きくって観賞価値が高いのがポイント。もしこの株から普通にタネが採れてくれれば、plants+オリジナル植物第1号はこの種間雑種になるかもしれない。

品種の写真

種間雑種の花

 

品種の比較写真

斜め上から見た比較写真

 

品種の比較写真

真横から見た比較写真
     左:オクラ 中央:雑種

右:トロロアオイ

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