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育種のトビラ
第32回:育種家の必殺技

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今回の 育種のトビラ では、ルックッキングのその後についてご報告いたします。(2010年9月24日)

 

◆ルックッキング:オクラ(ノリアサ)

写真:「しいな混じりの種子」と「正常種子」

上:しいな混じりの種子

下:正常種子

 

写真:育苗中のノリアサF3育苗中のノリアサF3

 

写真:戻し交雑のための交配戻し交雑のための交配

 

ノリアサF2が家庭園芸用の品種として有望な特性を示したということは、6月に報告済
今日は、その後日談だ。

 

選抜した8個体は、どれも結実良好。良いことだ。採種量自体には個体間差があったものの、嬉しい発見もあった。それは、1個体を除いて、残りの個体から得られた種子はしいなではなさそうだってこと。F2種子の大部分がしいなであったことを考えると、これは予想以上の進展。だって、たとえいくら凄い品種候補が得られたとしても、タネが採り難かったら商品化できないんだから。実際に、こういう理由で人知れずお蔵入りする品種候補って、意外に多かったりするのだ。

ルックッキングは、背が高くなり過ぎると家庭菜園には向かなくなるので、背が低くて花が大きいものだけからタネを採ることにした。ここでもし、背の低い個体が皆タネが採り難かったりしたら、これで終わりになってしまうところだった。だから予想以上と言ったわけ。
 
プロジェクトを開始して早3年目。そろそろ結果を出さなければならないので、ここでついに育種家の必殺技を使うことにした。その名は、『世代促進』。タネを播いてタネを採る、このサイクルを1年に1回じゃなくって、2回以上まわすことを世代促進と言うのだ。まさに、『時は金なり』の実践。まあ、育種会社にとっては、必殺技というより基本技。誰でもやっていることなんだけどね。
ということで、採ったばかりの8系統のF3種子は、8月6日に播種。発芽率の系統間は大きかったけど、苗は順調に生育中だ。

 

すべて順調と言いたいところだが、正直なところ大きな問題が出てきている。じつは、ノリアサの果実は硬かったのだ。若い果実でもカチカチのトロロアオイと、若い果実は柔らかいオクラの雑種の果実の硬さは、ちょうど中間ぐらいになった。いや、食べるには硬すぎると、正直に言うべきだろう。


ということで、もうひとつの育種家の必殺技もくり出すことにした。こちらの名は、『戻し交雑』。英語ではBack Crossという。雑種を、最初の交雑に使った親のどちらかにもう一度交配し直すことなのだ。
今回のケースでは、もちろん果実を柔らかくすることが目的。具体的に説明すると、育種目標に満たない形質は、果実が硬いということだけ。これをオクラ並みの柔らかさにするために、もう一度オクラと交配するということ。つまり、オクラとトロロアオイの雑種であるノリアサを、オクラの血を濃くしてあげて果実を柔らかくしようということなのだ。

 

もちろん平行して、最初に説明したノリアサF3で、果実の柔らかい個体が出現することも期待している。

ここまで来た以上、ターゲットはオクラだけど絶対にお蔵入りにはさせないぞ!

◆ルックキング2(まだ内緒)

残念ながらF2世代で両親の良いところ取りの個体が得られなかったルックッキング2だが、次世代(F3)に夢を託した20個体がある。これらを自家受粉して採ったF3 系統の種子を9月22日に播種。こちらも必殺技の『世代促進』解禁だ。もはやもう、来春を待ってタネを播くなんて悠長なことは言っていられない。何が何でもプロの意地を見せつけなきゃ。

 

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