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育種のトビラ
第39回:最後の望みは・・・

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今回の 育種のトビラ では、これまでに取り組んできたプロジェクトの今後の方向性についてご報告いたします。(2011年5月27日)

 

◆ルックッキング(ノリアサ)

 東日本大震災で1棟の温室が大きくゆがんでしまい、全く使用できない情況となった。 それが運の悪いことに育種のトビラで使っていた温室だったのだ。会社的には、他の重要なプロジェクトで使っていた温室でなかったことは不幸中の幸いだったということになるんだろうけれども……


 さて、ベニオクラにノリアサ(紅オクラ×トロロアオイ)を戻し交雑した苗は、第一花を咲かせるまではずっと紅オクラそのものと同じような形態を示していた。紅オクラよりは多少節間が短く葉も小さいことから、交配ミスによる紅オクラの自殖種子ではないことには自信があったが、ただもう一方で、花がオクラ並みに小さくなってしまうのではないかという不安もあったのだ。

 肝心の花の大きさについては、オクラ並みの大きさからそれよりも小さいという結果となってしまった。さらに悪いことに、花が咲いてからの生育が異常だったのだ。なんと花を咲かせて以降は生育速度が遅くなり、紅オクラとの株の大きさにどんどん差がついてしまう始末。花は小さいわ生育は遅いわでは、品種にするかどうかの判断以前の根本的な問題。したがって、じつは被災前に見込みがないという結論を下していたのだ。


 一方で密かに期待していた、オクラにノリアサ(紅オクラ×トロロアオイ)を戻し交雑して得られたたった1株の方は、順調に生育はしてくれた。そして花の大きさも種間雑種であるノリアサ並の大輪。花が大きく一花寿命が長いという育種目標をも満たしていた。しかし初花が散った後に膨らんできた果実の状態を見て、私の淡い期待は消し飛んでしまった。果実もノリアサと同じ特性を示したからだ。

 膨らみ始めて3日後のベビーオクラサイズでも、とても食べる気にはならない硬さ。さらに表面にはびっちり硬い毛が生えているところまで、ノリアサと一緒。戻し交雑した意味が全くないという結果になってしまった。

 もちろんこの株からタネを採れば果実(莢)の柔らかい個体が出現してくれる可能性がないとは言えない。しかしこれまでの経緯から判断すると、その可能性は非常に低いと考えるしかなく、費用対効果の観点からも深追いは禁物だ。以上の理由から、本プロジェクトは中止とすることとした。

◆これでいいんどあ(カランコエ)
 ベルタイプのカランコエについては、結論から申し上げよう。
 ・品種候補となり得る個体は獲得できなかった。
 ・今後の育種はオランダのフィデス社で継続する。

 つまり品種にするにはもう一段階改良を進める必要があるため、世界初の八重咲き品種カランディーバを育種した実績のあるフィデス社に後を託することにしたのだ。フィデス社はグループ会社であるし、カランコエ育種の経験も豊富だ。それよりなにより、カランコエ育種に適した環境下で多くの個体を扱うことができる。こうすることによって良い品種を育成できる可能性が高まる上に、開発期間も短縮できるわけだから、会社としてはまっとうな判断を下したと言わざるを得ない。

 正直寂しい気持ちはあるが、個人の興味やわがままを通して良い段階は過ぎている。もともと2年前にフィデスに託そうと考えていたプロジェクトだ。私は快くこの判断に従うことにした。
 今、選抜した株は11個体。現在これらすべてをオランダに送る準備をしているところだ。

フィデス社のサイトはこちら>>

◆ルックッキング2(いよいよ発表!)
 なんだかんだいって3年間やってきたことすべてがうまくいっていないというのが現状。これは重々承知している。
それでも最後の望みを託しているルックッキング2がまだ残っている。ここでついに、見て良し食べて良しのプロジェクト第2弾の植物が何であったかを発表させていただこう。

 まずは写真から。

スイートバジル

スイートバジル

ブッシュバジル

ブッシュバジル

なんだか良さそうな雰囲気の系統

なんだか良さそうな雰囲気の系統

評価を待つ苗たち

評価を待つF4世代の苗たち

 そう、最後の砦であるルックッキング2はバジルだったのだ。

 私自身も庭で毎年スイートバジルを育てているが、だらしなく伸びてしまう草姿がずっと気に入らなかった。プロの生産者向きには問題のない性質も、家庭の狭いスペースで感じよく育てたい場合には欠点になる。確かにスイートバジルの草姿が気に入らないなら、たくさんに枝分かれしてボール上のかわいらしい草姿になるブッシュバジルという選択肢もある。しかしこのブッシュバジルはあまり美味しくないのだ。それに1枚1枚の葉が小さ過ぎて使い勝手が悪いときている。消費者目線で考えれば、育種目標は単純明快だ。
具体的には、スイートバジルとブッシュバジルのいいとこ取りの家庭園芸向きの品種。

 現在スイートバジルとブッシュバジルを交配して得られたF4世代を育苗中。果たして目標通りのコンパクトでこんもり良く枝分かれするスイートバジルが獲得できるかどうか。来月の報告を楽しみに待っていただきたい。

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