- 役立つ病害虫の話
- Disease And Insect Damage
ジャパンアグリバイオの研究員が、皆様に役立つ病虫害の情報を連載します。
バックナンバーの情報につきましては、発表当時の内容をそのまま掲載しております。文中の農薬に関しましては必ず最新の登録状況をご確認ください。今まで使っていない農薬を使用する場合は、お近くの種苗専門店や農協、公共機関ともご相談ください。
- ニチニチソウ疫病について
- 2010.8.20
![]() 写真1 ニチニチソウ疫病の症状 梅雨明けしたというのに、雨天が多く、蒸し暑い夏。ニチニチソウの花壇を見ると、写真1のように酷い葉枯れ症状の株を見つけてしまいました。これはニチニチソウ疫病という病気です。本病の症状は葉先や葉縁から淡緑色の水分を失ったような斑点を生じ、次第に拡大し,葉の大部分が枯れるように病徴が進行します。多発生すると茎の侵された部分が黒変し、その部分から上方の茎葉は枯れ、ついには株全体が枯死してしまいます。
![]() 写真2 疫病菌の顕微鏡観察 この菌はクロミスタ界卵菌門に分類されるPhytophthora nicotianae と呼ばれる病原菌です。この病原菌は細胞壁が植物と同じセルロースからできており(菌類の細胞壁は通常キチンが主成分)、菌糸に特徴ある形状の遊走子のうを形成します。水分が多い条件に遭遇すると、本病原菌は遊走子のうの中で2本の鞭毛で泳ぐことができる遊走子を作り、これを水中に放出します。作られた遊走子の運動能力こそがPhytophthora による植物への感染被害を甚大なものとしている大きな要因です。
発病しやすい条件:
診断のポイント:
伝染原と対策: ![]() 図1 Phytophthora nicotianaeの生活環
対策としては |
[ TEXT:森本 正幸 ] |
- ニチニチソウの病害
- 2008.6.2
![]() 茎頂での疫病 ![]() 地際茎での灰色かび病 ![]() 茎頂でのくもの巣かび病 ニチニチソウを露地で栽培した場合には、比較的マイナーな菌核病、白絹病といった糸状菌病や、キュウリモザイクウイルス(CMV)によるモザイク病、ファイトプラズマによる叢生(そうせい)、緑花、黄化といった病害も発生しますが、温室での生産段階で問題となる病害となると、疫病、くもの巣かび病、灰色かび病、苗立枯病の糸状菌(カビ)による4種病害ではないでしょうか。今回はこれら4種の病害の特徴について簡単に紹介します。
●疫病
●灰色かび病
●くもの巣かび病
●苗立枯病 比較的新しい罹病部位を取り、軽く湿らせたティッシュペーペー等とともにビニール袋に入れて25℃前後のところに1〜2日おいておくと、それぞれに特徴的な菌糸や胞子が観察できて判別しやすくなります。予防と防除にはいずれも灌水量を適切にコントロールし、過湿条件にしないこと、どの病害か見極め適切な農薬を用いることが必要です。 (2008年6月2日) |
[ TEXT:縄田 治 ] |
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